アーペル『言語の理念 ――
人文主義の伝統:ダンテからヴィーコまで』
K.-O.Apel, Die Idee der Sprache: in der Tradition des Humanismus von Dante bis Vico, Bourvier Verlag 1963
序章
・探求の三区分 ――
ダンテ、人文主義、ヴィーコ:これらの連関への問い
・現代の言語把握の中世的起源 ――
唯名論、ロゴス神秘主義、ヨーロッパ諸国民における母語の発見
・ダンテとイタリア人文主義 ――
ヨーロッパにおける言語問題への格好の導きとしての「言語の問題」
・人文主義 ――
古代の言語理解と特殊近代的な言語理解との媒介
・ジャンバッティスタ・ヴィーコにおけるローマ・イタリア的人文主義の成就
―― バロック形而上学の「自然的体系」
第一部 ダンテ ―― 西洋における母語の発見
・ダンテ『俗語論』(1304) ――
歴史的・生成論的言語学の神学的基礎づけ。民族ごとの書記言語の形成の綱要
・ダンテによる母語の発見の歴史的背景
・言語を操る人間――
動物と天使の中間存在
・言語起源論 ――
聖書と教父に範を取った思弁:歴史的・生成論的問題設定の出発点から、ジュースミルヒ、ヘルダーまで
・言語のバビロン的混乱と罰としての言語の多様性
――
ダンテ:旧ヨーロッパの三大「聖なる言語」の解体と、新ヨーロッパの救済の言語
・発展をその本質とする俗語の発見――
人工的「文法」としてのラテン語との対比
・ダンテの綱領:文学言語としてのイタリア俗語のための統一的・美的規範の提示
第二部 人文主義の言語概念への問い
・ラテン語中心的言語理解 ――
古典的・ローマ的およびローマ的・教会的起源
・ラテン語中心的言語理解 ――
ヘレニズムの言語理解を背景として
・雄弁家 ―― 言語理解の要
・ヘレニズムのロゴスをめぐる諸学の内的連関
―― ストア的lekton概念における修辞学・文法学・論理学:修辞学的トピカとしてのlekta
・キケロにおける発見法としてのトピカの優位
――
陳述法としての弁証論に対して:ヨーロッパ言語人文主義の基本的動向
・言語人文主義に内包される言語哲学的洞察の間接的確証
―― 近代の論理的言語構成に即して
・言語の語用論的次元:修辞学的人文主義に含まれる哲学
・キケロ ――
語用論的言語理解の集約点:新たな基礎づけ
・真理と言語の関係に対するヘレニズム期の理解:言語人文主義の論証能力の内的限界
―― 形式論理学との対比
・ヴィーコによる打開:歴史的母語における真理問題
―― 論理主義の言語哲学的要求に抗して
・中世の人文主義とイタリア・ルネサンスの人文主義:本書の主題にとっての限定
・ペトラルカにおける言語経験:人格的表現形態の模索と、人文主義の限界
・サルターティ:その世界観と言語解釈学:人文主義的精神科学の萌芽
・詩人神学者あるいは詩人の神的霊感というトポス:人文主義的解釈の限界
―― ロゴス神秘主義の精神による刷新との対比で
・ポッジョ・ブラッキオリーニ、シッコ・ポレントン、ブルーニにおけるキケロ的言語観
・ブルーニ ―― 人文主義の翻訳理論
・ヴァッラ ――
形式主義的言語理解:ローマ帝国の至上性との類比
・要約 ―― ルネサンスのラテン的人文主義の文化史的役割:古代の模範との対比で:言語形式の制度的自己理解の相補物、あるいはヨーロッパの新たな教養理念の起源としての言語観念論
a) 予備考察:人文主義と近代の諸言語
付論:グラッシの人文主義理解
b)
「俗語人文主義」における言語理解の展開と限界
・「言語の問題」 ――
ダンテにおける言語問題の「反復」
・レオン・バッティスタ・アルベルティ
――
人文主義における俗語の尊厳と問題群
・ロレンツォ・デ・メディチ ――
俗語の擁護と言語に対する評価一般
・ピエトロ・ベンボ ――
「俗語人文主義」および近代の言語古典主義の基礎づけ
・ベンボの弟子たちと、「俗語人文主義」の内的弁証法
―― 「生き生きとした」日常言語の復興
・ヴァルチとヨーロッパ的言語人文主義のトポス
・スペローネ・スペローニ ――
言語人文主義と、『言語についての対話』におけるその批判者
c) 15世紀の妥協 ――
言語人文主義と唯名論的学問のあいだの調整
1. 修辞学と詩学の理論において
2.
修辞学的論理学と認識論(ニツォリウス)
3. ピコ・デラ・ミランドラ
d) フランス人文主義における言語論の綱要
――
デュ・ベレー『フランス語の擁護と解説』:スペローニの模倣、およびフランスの言語合理主義の芽生え
e)
ドイツにおける人文主義的言語理念の刻印と機能
・概観:ドイツ言語人文主義の特徴
―― ロマンス語諸国との対比で
・ドイツ初期人文主義の言語把握:ハンカーマー
・ルターの言語概念:ロゴス神秘主義を背景とするドイツの言語人文主義の頂点と自己限定
・言語の体系的(人間学的)区別の試み:人文主義的「教養知」、唯名論的「労働知」、ロゴス神秘主義的「救済知」
・言語の歴史的区別の試み:唯名論とロゴス神秘主義の主観主義的復興。古代末期の教養理解に即した調停としての人文主義
第三部 「精神諸科学の自然的体系」における言語人文主義
・相互了解一般の理論:技術的・科学的観点での人文主義的教養知
・「文法学」と「人間の領域」
・ベーコンにおける「哲学的文法学」の理念:実用的観点からの言語比較と言語の評価、および民族心理学
・ベーコンにおける自然科学的音声学、音声生理学の方法的自立
―― ベーメの霊・肉の受肉理論との対比で
・概観:ライプニッツによる経験的言語学と構成的言語論理学の関係の基礎づけ
―― 本来の人文主義における超越論的・文献学的問題
・ライプニッツ『哲学者の最良の講義法』
――
ニツォリウスの人文主義‐唯名論への語用論的接近
・『ドイツ人への警告』 ――
ドイツの人文主義的語用論のもつ啓蒙主義的要素の基礎づけ
・計算用紙のモチーフ ――
『予期しえぬ思考』における言語の判定基準
・ライプニッツにおける国語辞典とその科学化の人文主義的綱要
・語幹に対するバロック的思弁の合理化(「自然言語」の理論):ライプニッツの語源学
・言語における普遍的意味の起源ヘの問い、および超越論的文献学の問題:ロックとライプニッツ
a)
ヴィーコ理解の三つの歴史的視点:「ドイツ的運動」、バロック形而上学の「自然的体系」、イタリア人文主義の伝統
b)
ヴィーコの了解理論:「普遍数学」または超越論的文献学
・ヴィーコの認識論の第一形態 ――
クザーヌスの「普遍数学」の根本主題との繋がり:「数学的人間は第二の神である」
・ヴィーコの認識論の第二形態 ――
人間の歴史的世界の超越論的文献学的再構成:神的摂理のロゴスに即して
c)
「トピカ」の理念とヴィーコの言語概念
――
初期の文化批判的著作『われわれの時代の研究法について』
d) 『新しい学』における言語哲学
・原始時代の「詩的論理」 ――
人類の最初の「トピカ」
・言語の人文主義的形成概念の克服
――
有限的人間の創造力による産出と神話的世界構築:一切の概念的認識を超えて
・驚異の自然言語‐象徴‐アレゴリー:感情的世界像の構成
――
言語と超越論的理性との結びつきを超えて
・「想像的普遍」の論理 ――
「神的」・「英雄的」言語のトピカ
・音声言語の成立の三様相 ――
記号言語における沈黙・聖刻文字・「人間的・規約的」(俗語的慣習)
・リズムと音楽 ――
原始的言語の祭儀 ――
原始的生活における言語の制度形態
・伝承される言説素の成立:ヴィーコにおける音声言語の理論:言語起源の「自然」説と「人為」説の綜合的展開
・人間の言語の多様性の原因と意味への問い
――
ロック・ライプニッツ・フンボルト・ヴィーコ
・ヴィーコにおける全言語の「精神的辞書」の構想
――
語源学における歴史的精神諸科学の超越論的文献学的基礎づけ
・要約と結論 ――
ヴィーコの超越論的文献学:言語人文主義とキリスト教的・プラトン主義的思弁的ロゴス理解の徹底化、ドイツのロゴス神秘主義の伝統との歴史的・内容的関係