序 エーベリンク「近代の原理としての自己保持、および主観性の理論に対するその意義」
一 ホルクハイマー「理性と自己保持」
二 シュペーマン「市民的倫理と非目的論的存在論」
三 ヘンリヒ「近代哲学の基本構造 ―― 付論:自己意識と自己保持」
四 ブルーメンベルク「自己保存と保持 ―― 近代合理性の構築」
五 ブック「自己保持と歴史性」
六 ヘンリヒ「自己保持と歴史性」
七 ゾンマー「自己保持は合理的原理か」
八 エーベリンク「近代における主観」
アドルノ/ホルクハイマー『啓蒙の弁証法』で主題となった「理性の自己保存」といった主題を切り口として近代を読み解く論考を編集して一冊としたもの。
「自己保存」(conservatio sui)は、とりわけスピノザやホッブズに見られる近代的システムの誕生に大きく寄与した概念である。デカルトにおいては神の「持続的創造」という仕方で論じられていた世界の存立の問題が、この主題を通して内在化され、近代の基本的構造にまで高められる。
本書では、そうした経緯を中世後期にまで遡りながら議論する論考(ブルーメンベルク)をも含め、「自己保存」と「理性」ないし「主観性」という問題が徹底して論じられる。
・冒頭に採られたホルクハイマーのもの(一)は、1941/42年に書かれ、ベンヤミンの記念論文集に寄せられた古典的論考。
・ブックとヘンリヒのもの(五、六)は『詩学と解釈学』の第五巻「歴史・出来事・物語」に収録されていたものの再録。
・ヘンリヒの一遍目(三)とゾンマーの論文は、本書が初出。
・エーベリンクの序文は30頁に渡るもので、問題設定の由来や本書全体の各論の位置付けを行っていて、全体の概略にとって有益。