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はじめまして。
>ロマン主義系のものを読みたい
「ロマン主義系」というと、哲学の方では時代的には、フィヒテ、シェリングということになりますが、おそらくそういうイメージではないでしょうね。「ロマン主義」という括り方からすると、もう少し文学寄りのことを考えておられるのかと思います。さて、そうなると意外とあるようでないのですよね。
シュレーゲル、ノヴァーリスは、有名な割には本格的な邦語の解説書のようなものがなくて困ります。私も以前、その手のものを捜して、林誠宏『ドイツロマン主義の哲学』(第三文明社)などという数少ないロマン主義哲学の書物を読んではみたものの、どうにも充たされない思いをしたものです。ドイツで初期ロマン派研究が活況を呈して、ベーラー/ヘーリッシュ『初期ロマン主義の現代性』(Bohler, Horisch,
Aktualitat der fruhen Romantik, Schonigh 1987)を入手して、ようやくこちらの考える種類のロマン主義研究が出てきたと悦んだものです。生憎これは翻訳がありませんが、こうした路線での紹介としては、今泉文子『鏡の中のロマン主義』(勁草書房)があります。この著者は最近平凡社から『ロマン主義の誕生』という本を出し、私も発注したところです。個人的にはメニングハウス『無限の二重化』(法政大学出版局)が、この傾向を推し進めた成果としてお奨めです。ポスト・モダンの哲学などに馴染みがあると分かりは早いでしょうが、初めて読むものとしては難しいかも。それは、ベンヤミンの『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』(ちくま学芸文庫)も同じかもしれません。
ロマン派の文学者の哲学的著作の翻訳としては、やはり、シュレーゲル『ロマン派文学論』(冨山房百科)が代表的なところでしょう。同じシリーズでのゲーテ『自然と象徴』も、直接にロマン派ではありませんが、ロマン派的な自然観に大いに通じるところがあります。シェリングの自然哲学などをここからイメージするのも悪くないかと。去年の『思想』にも、「ゲーテの自然学」という特集がありました。高橋義人『形態と象徴』(岩波書店)もこの路線。
あとは、国書刊行会のロマン派全集の中の『無限への憧憬』がロマン派の文学者の理論的な著作を編集したアンソロジーになっています。
ロマン派に多少引っかかる哲学史という点では、ハイネの『ドイツ古典哲学の本質』(岩波文庫)は愉しく読めます。もう一点、ロマン派というキーワードで捜すとむしろ見つからないかもしれない名著として、ノイバウアー『アルス・コンビナトリア』(ありな書房)があります(原著タイトルは『象徴主義と記号論理学』。Studia humanitatisに書名のみ掲載。そのうちに内容紹介をします)。ノヴァーリスを中心としたロマン派の思想を、普遍記号論という観点から読み解いたもので、情緒纏綿たるロマン派という既成イメージを覆すにはもってこい。お奨めです。
後は,『叢書・ドイツ観念論との対話』全六巻(ミネルヴァ書房)などはどうでしょう。これは、『講座・ドイツ観念論』全六巻(弘文堂)と対を成す性格のものですが、後者が純粋に哲学であるのに比べて、美学・藝術をずいぶんと取り入れていて、幅広い論集になっています。図書館などで、気の向いたところを拾うにはいいかもしれません。
すぐに思いつくのはこんなところでしょうか。また具体的にご要望があれば考えたいと思います。他の方からの情報提供もお願いします。
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